デジタル・プラットフォームの経済的インパクト

日本経済政策学会の全国大会にて、以下の発表を行いました。

高木聡一郎(2019)「A Literature Survey on the Economic Impact of Digital Platforms」日本経済政策学会 第76回全国大会、2019年6月2日.

「我々はデジタル・プラットフォームの経済的インパクトについてどれだけのことを知っているのだろう?」という問いに、先行研究レビューを通じて答えるものです。

プラットフォームとは何か?

これまで、何度かプラットフォームについて書いているが、「プラットフォーム」という言葉は様々な意味合いで使われているようなので、自分なりに整理してみたい。

自分なりに、というのは、経済や経営の文脈でどのように定義できるかということであるが、幸いなことにプラットフォームについて世の中には研究蓄積が進みつつある。もっとも経済・経営の観点からしっくりくる定義を、先行研究も含めてボストン大学のVan Alstyne准教授がブログで整理しているため、これをもとに書いてみたい。

Van Alstyne准教授は、プラットフォームの要件として以下の2点を挙げている。

  1. 複数の製品群にわたって共通に使用される一連のコンポーネントであり、製品群の機能が第三者(サードパーティ)によって拡張可能なもの
  2. ネットワーク効果を特徴とするもの

要するに、第三者によって機能の追加が可能であり、ネットワーク効果(正のネットワーク外部性)を持つものである。

第三者による機能追加というのは、比較的分かりやすいだろう。AndroidやiPhoneには、第三者が作ったアプリケーションをインストールすることができる。同様に、MicrosoftのWindowsには様々な人が作ったソフトを追加することができる。しかし、Officeというソフトにさらに機能を追加することは、一般的にはできない。

もうひとつのネットワーク効果とは、使う人が多ければ多いほど、ひとりひとりのユーザーにとって便益が増えることだ。電話のユーザーが2人しかいないときよりも、100万人いた方が、繋がる相手が多いため、各ユーザーにとってメリットが大きくなる。

ネットワーク効果の留意点は、コストではなく便益に着目している点である。単にユーザーが多いために割り勘効果でコストが下がる場合、通常はそれをネットワーク効果とは言わない。従って、クラウドコンピューティングにおいて、ユーザーが多ければ設備費用を割り勘できてコストが下がるというのは、ネットワーク効果とは呼ばないだろう。

ではどのようなものがネットワーク効果なのか。Liebowitz教授とMargolis教授は、ネットワーク効果のエッセンスを「他のユーザーとの相互作用が可能になることによって得られる追加の価値」としている。

あるユーザがプラットフォーム上に提供した機能を他のユーザーが使ったり、他のユーザーとプラットフォーム上で取引するなど、ユーザー間で何らかの相互作用がある状況において、取引相手が多いほど各ユーザーにとって利得が多いような場合に、ネットワーク効果があるというのである。

この2つの要件をもとに、以下のようなサービスがプラットフォームの定義にどの程度当てはまるか検討してみよう。

  • Facebook
  • LINE
  • Android
  • iPhone
  • Google Map

FacebookやLINEのネットワーク効果は明らかだろう。ユーザーが多いほど、様々な人と繋がることができる(但し、ユーザの中には知り合いに見つかりたくないという理由で、より小規模なSNSに移行する人もいると聞く。)。一方、第三者による機能追加については追加できる機能を限定した形で公開されている。LINEの場合はスタンプという形であり、Facebookの場合は広告、アプリなどの形態がある。

それに比べて、AndroidやiPhoneはネットワーク効果に加え、誰でもアプリを提供できるため、第三者への公開性はより高いと言えるだろう。

以前取り上げたGoogle Mapも、ユーザーが様々なレイヤー(情報)を付加できるという意味では公開性がある。また、ユーザーが多いほど様々な情報を付加する価値が上がる。従って、この定義に従えばGoogle Mapもプラットフォームと呼ぶことができる。

この2つの要件から浮かび上がってくるプラットフォームの要蹄は、自由度と多様性である。多様性が高いほどユーザー同士の相互作用を行う価値があり、ネットワーク効果を高めることができる。そして、第三者がプラットフォーム上で自由にできるほど、多様なユーザーが参加することになるだろう。

もちろん、サービスとしてのスコープの設定は重要なので、際限なく自由にするわけにはいかない。各サービスがその発展過程において、自由度と多様性をどのように持たせているか、今後も注目していきたい。