Blockchain Economics出版のお知らせ

書籍「Blockchain: Blueprint for a New Economy」で知られるMelanie Swan氏らとともに、「Blockchain Economics: Implications of Distributed Ledgers: Markets, Communications Networks, and Algorithmic Reality」という書籍を発刊させていただきました。

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私は編者の一人として書籍全体の編集に関わったほか、私自身の章も採録されています。

本書籍は査読付き論文を採録した学術図書であり、ブロックチェーンの持つ意味合いや影響について専門的に踏み込んだ内容の書籍となっています。

私自身の論文は第2章となっています。

Chapter 2: Does Blockchain “Decentralize” Everything?: An Insight from Organizational Economics(ブロックチェーンはすべてを分散化できるか?組織経済学からの洞察)

ブロックチェーンがどこまで組織を分散化できるのか、組織経済学の観点から論じたものとなっています。

要旨は以下の通りです。

There have been increasing expectations that blockchain technology would decentralize organizations in a wider range of services such as sharing economy, public ledgers, and electricity. On the other hand, decentralization is facing difficult challenges such as seen in the split of Bitcoin and the growing expectation on permissioned ledgers. This chapter aims to shed light on the economic mechanisms behind blockchain-enabled decentralization from the viewpoint of organizational economics. An analysis is provided with an in-depth case study of the Bitcoin ecosystem. Results reveal that blockchain technology decentralizes organizations by reducing uncertainty through codifying tasks and also by reducing the risk of opportunism through the governance by distributed participants, while those decentralization applies only to a fraction of the whole ecosystem. Additionally, decentralization sacrifices workers’ incentives such as income risk aversion and efficient decision-making. Therefore, the extent of blockchain-enabled decentralization is determined by the trade-offs between efficiency through tasks marketization and workers’ incentives.

よろしければお手に取ってご覧ください。

 

イノベーションに含まないものは何か?

「イノベーション」が経営・経済の話題の中心となって久しい。イノベーションは発展するための必須要素であると見なされているようである。

イノベーションが何であるか、経済学では色々と議論されてきた。代表的なものにシュンペーターの「物や力の新結合」というものがある。似た議論に、アーサーの「技術は既存の技術の組み合わせから生まれる」というものもある。この辺の概念的・理論的な話はまた別の機会があれば書きたいと思う。

ところで、イノベーションが流行っていることで、以下のような疑問を感じたことはないだろうか?

  • イノベーションの定義は何か?
  • イノベーションとイノベーションではないものの境目は何か?

こうした疑問に答える素材の一つに、OECDが出しているOslo Manualというものがある(readリンクから誰でも読める)。イノベーションの計測・研究を行うための方法論をまとめた文書である。

Oslo manualによれば、イノベーションとは以下の通りである(筆者訳、以下同様)。

イノベーションとは、新規の、または顕著に改善された製品(財かサービス)、またはプロセスやマーケティング方法、または業務遂行、職場環境や対外関係にまつわる新しい組織的な方法を採用することである。(p.46)

これを4類型に整理したものが以下のものだ。

  • プロダクト・イノベーション
  • プロセス・イノベーション
  • マーケティング・イノベーション
  • 組織イノベーション

そして、Oslo manualの面白いところは、「何がイノベーションではないか」について記述があることだ。以下のようなものはイノベーションではないとされる(p.56)。

  • プロセス、マーケティング方法、組織の運営方法、製品投入をやめること
  • 単純な資本の置き換えや拡張
  • 要素価格の変化のみから生じる変更
  • カスタマイズ
  • 定期的・季節的、あるいは周期的な変更
  • 新製品または顕著に改善された製品の売買(流通業等にとって)

イノベーションには様々な分野から様々なレベルで文献があるため、特に実務家にとっては何を根拠にしていいか困る場合もあるだろう。そんな時にはOECDという国際機関が定義しているOslo manualは参考になるのではないだろうか。

Wi-Fiのために車に乗るか

New York Timesによると、 Uberがインドで無料WiFiサービスを提供するとのこと。(Uberが何かを説明するのは難しいが、NYTが”the ride-sharing company”と呼んでいるのは端的な描写だ。)

要はUberの車に乗れば無料でWiFiが使える。逆に言えば、利用者にとって無料WiFiがUberを使うインセンティブになるということである。

途上国では固定回線よりも携帯電話などの無線回線の方が投資が少なくて済み、早くから無線の方が普及しているが、それでもスマートフォンの普及で無線回線の高速化が追いついていないのかもしれない。

ところで、TEDトークでBill Grossが指摘しているように、スタートアップにはタイミングが重要だ。

この話に基づけば、Uberが成功しつつあるのは、車を持っているがリーマンショックで雇用が減り、副収入を得る必要がある人たちがたくさんいたことによるところが大きいかもしれない。

もしインドでUberが普及しつつあり、またWiFiに集客効果があるとすれば、タイミング的に何かがうまくいっている可能性がある。例えば以下のようなことだ。

  • 自家用車を買う人が増えつつある
  • 車は買えるが、他の雇用は不足している
  • タクシーの不足、あるいはタクシー業界の未成熟
  • 高速モバイルインターネット回線の不足

途上国は先進国と同じような過程を経て発展していくわけではない。その時代時代に使える技術を取捨選択しながら進んで行く。その過程においては、先進国とは異なる産業構造、技術の普及、制度・規制のバランスが生まれる。その独自のバランスの中で、何にニーズがあるかを見極めることが大事なのだろう。

経済学を覗いてみるなら

経済学ってどんなもの?

という方にお勧めなのが、マンキュー 入門経済学。
(現在はより新しい版があります)

私がアメリカ留学(ハーバード大学ケネディスクール)時に得られたもっとも大きな収穫が、マンキューの教科書との出会いでした。

マクロとミクロに分かれている原著を読んだので、大変でしたが。。。

「世の中のことを、できるだけ科学的に理解しようとする」ことが経済学。

難しくなりがちな内容を、身近な例をもとに、徹底的に分かりやすくするための工夫が凝らしてあります。

アメリカの大学で感じたのは、「難しいことを簡単に、面白く」することが非常に重視されていること。難しいことを、そのまま退屈に伝えたり、難しいまま説明しては、先生の腕の見せどころがありませんからね。

というわけで、少しでも興味があったらこの本を覗いてみてください。新たな世の中の見方が見つかるかも!?