書籍『デフレーミング戦略』予約開始

私の新著『デフレーミング戦略 アフター・プラットフォーム時代のデジタル経済の原則』が、Amazonにて予約開始となっております。7/16発売予定です。

417SSPmOIYL._SX339_BO1,204,203,200_

プラットフォーム、キャッシュレス、ニューリテール、信用スコア、ブロックチェーンなど最新のテクノロジーとビジネス動向を踏まえ、今後のビジネスモデルから組織の形、働き方までを幅広く論じています。

その核となるキーワードとして『デフレーミング』(フレーム:枠が崩壊するという意味の造語を提示しました。

どうぞお手に取ってご覧ください。

内容紹介(Amazonより)

本書の目的は、「デフレーミング」という概念でデジタル化がビジネスや経済に与える本質的な影響を明らかにすることです。

「デフレーミング」とは、枠(フレーム)が崩壊するという意味の造語。デジタル技術が社会経済に与える影響を理解するための共通的なフレームワークとして、ビジネスモデル、企業のビジネス戦略から、私たちの働き方、キャリア設計、学び方にいたるまで、あらゆる変化をとらえる鍵となります。

デフレーミング戦略とは、伝統的な製品、サービス、組織などの「枠」を越えて、それらの内部要素をデジタル技術で組み直すことで、ユーザーにより最適化されたサービスを提供できるようにすること。従来の「サービス」や「組織」といった「枠」がなくなる時代に、万人に受けるパッケージ化されたものから、ユーザーに個別最適化されたものに転換させ、企業という枠で仕事を受発注するのではなく、個人のスキルやリソースを個別に特定して取引するビジネスの考え方です。

本書では、その様々な現象や事例を通じて、今後のビジネスやサービスの変化を考察するとともに、近年クローズアップされている「デジタル・トランスフォーメーション」(DX)についても、それが社会に与える深い影響を、明らかにします。

【本書に出てくるトピック、キーワード】
・デフレーミングというフレームワーク
・デジタルトランスフォーメーション
・GAFAの今後の展開
・中国 アリババ、テンセント、Line,WeChat、インスタグラム、美団、ZOZO
・個人の信用経済と決済、電子マネー
・プライバシー問題
など

 

デジタル・プラットフォームの経済的インパクト

日本経済政策学会の全国大会にて、以下の発表を行いました。

高木聡一郎(2019)「A Literature Survey on the Economic Impact of Digital Platforms」日本経済政策学会 第76回全国大会、2019年6月2日.

「我々はデジタル・プラットフォームの経済的インパクトについてどれだけのことを知っているのだろう?」という問いに、先行研究レビューを通じて答えるものです。

巨大プラットフォーム企業をどう規制すべきか

GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表される世界的な巨大プラットフォーム企業をどう規制すべきかという議論が急速に活発化している。

この背景として、例えば大手プラットフォーム企業の競争優位の状態が固定化されるとか、個人情報を独占的に取集している、また課税を回避しているなど様々な問題が指摘されている。こうした中、米国のエリザベス・ウォレン上院議員のように、企業分割を主張する人まで現れてきた

しかし、これらの議論には複数の異なる論点が混在していたり、必ずしも論理的な対応ではなく、感情的な反応も見られる。

筆者は、こうした大手プラットフォーム企業に対する規制は、論点を明確に切り分け、それぞれの論点について客観的な事実の検証に基づき、政策効果の高い対策を取るべきだと考えている。以下ではその論点を示していきたい。

1.大手プラットフォーム企業は独占的な地位を用いて不公正な商取引を行っているか

例えば、出店している小売店の出店料を大幅に値上げしたり、一般ユーザーの個人情報を転売できるように利用規約を変更をして、利用者に不利益が生じる変更を行うことが想定される。そして、競合他社がいないために、ユーザーがその条件を受け入れざるを得ないという場合である。これを検証するためには、こうした不当な変更などがあったかどうかを利用者に対して調査する必要がある。こうした不利益変更は、リアルな場面では、デパートの小売店に対する扱いと類似している。

もう一つ問題になっているのは、プラットフォーム上に展開するサービスについて、プラットフォーマー自身のサービスを上位に表示する等によって独占的な地位を濫用していないかという点である。これについても客観的な事例の蓄積が必要である。こちらも、コンビニなど大手チェーンのプライベートブランドと他社製品の競争状態にも類似している。

以上のように、①不利益変更の有無、②他のプラットフォームへの乗り換え可能性の程度、③既存のリアルサービスにおける規制との対比、の3つの視点で状況を確認する必要がある。

2.大手プラットフォーム企業は蓄積されたデータによって、人工知能開発においても優位に立ち、独占的な地位を築くか

人工知能の開発にデータが必要であることは間違いない。そして、大手プラットフォーム企業がビッグデータを抱えているが、そのようなデータを持たない企業は不利だ、という意見がある。

しかしこの数年だけでも、アリババやテンセントは巨大なプラットフォーム企業に成長し、大量のデータを保有するようになった。ほかにも、Uberは大量のモビリティデータを持っているし、Airbnbは観光と宿泊データ、メルカリはC2Cの取引について膨大なデータを持っている。要するに、データはいくらでも作れるのである。ユーザーが便利だと思うサービスさえ作れれば、ユーザーがそれを使うたびにデータは無限に生成される。問題はデータが無いことではなく、ユーザーの支持を得てデータを作れるようなサービスが生まれていないことである。

その一方で、より深刻なのは「人材」の独占である。優秀な学生やエンジニアは、より高い給与とやりがいを求めて、大きな仕事のできるプラットフォーム企業に就職する傾向にある。もちろん、彼らはさらに新しいことにチャレンジすべく辞めていくケースも多く、労働市場の競争状態には何ら問題はない。

問題は、伝統的な日本企業が、そうした人材獲得競争の輪から外れているということである。大手日本企業の中にも、破格の給与を出して優秀な人材を獲得する試みを始めているところもあるが、条件は給与だけではない。社内の風土や、権限の大きさ、意思決定の速さ、ワークスペースの快適性など、優秀な人材を惹きつける要素が揃っているかが重要である。

3.大手プラットフォーム企業は不公正に課税を回避しているか

大手プラットフォーマーの納税額が、標準的な企業と比べて極端に低いことが問題視されており、売上高に課税する「デジタル課税」の導入が検討されている。欧州委員会は、伝統的な企業が23.3%の法人税を払っているのに対して、デジタル企業は平均で9.5%しか支払っていないと推計している

インターネットサービスは、事業拠点を設けなくともリモートでサービスを提供できるため、既存の税制が想定していなかった事態が生じていることは確かである。リモートでサービスを提供していても、道路、通信、社会一般の安全性など各国の公的インフラに依存しているのは確かであり、相応の費用負担を求めるのは合理性がある。公平性と実効性をともに確保できる制度の設計は容易ではないが、検討課題である。

一方、米国のムニューシン財務長官は、事業所の有無にかかわらず売上高に課税するという方法を、「インターネット企業だけ」に適用するというのは、制度の一貫性から問題があると主張している。確かに現在はインターネット企業なのか、金融業なのか、物流業なのか、境界があいまいになりつつあり、どこまで適用するのか検討する必要もあるだろう。

4.大手プラットフォーム企業はユーザーのプライバシーを侵害しているか

プライバシーの問題は、ユーザーのプライバシー、すなわち狭義には「私生活をみだりに公開されない権利」、広義には「自己情報をコントロールする権利」が侵害されているかという問題だが、そこに「他国のサーバーに預けて大丈夫か」というナショナルセキュリティの観点が混在しており、特に論点が混在している課題だ。

前者の問題では、近年のITサービスは一般的に情報の公開範囲を細かく設定できるため、みだりに公開されるという点で問題になるケースは少ない。一方、自己情報のコントロール権という点では、「便利なサービス」ということで、無断で(あるいは読むのが事実上困難な利用規約に書いてあるかもしれないが)自分の情報が活用されていることがある。

例えば電子メールの内容からカレンダーアプリに転載したり、写真から自動的に人物名をタグ付けしたりといったことは、ユーザーが自ら明示的に依頼したわけではないが、企業側がデータを分析してサービスをオファーしている。

より良いサービスの開発のためという目的もあり、また実際にユーザーが便利なものとして受け入れる可能性も充分あるため、一概に線を引くことはできない。しかし、ユーザーが不快に思うサービス変更については、中立的な第三者が情報を収集し、状況を把握する仕組みが必要だろう。

最も重要なのは透明性の確保

いずれの問題にも共通するのは、ネットサービスは何が行われているのか、どのように重要な情報が管理されているのかを、外部から見ることが難しいということだ。そのため、客観的な事実に基づかず、印象のみで規制を議論することになりやすい。

したがって、まず取り組むべきなのはサービスの透明性をどう確保するかである。デジタルな監査、第三者による苦情申し立て制度の拡充、報告制度など検討の余地がある。あるいは、テクノロジーによってユーザーサイドから情報を収集する仕組みも作れるだろう。

ニューヨークタイムズが伝えているが、ウェブの生みの親であるティム・バーナーズ=リーは、2019年3月のイベントで「最も重要なのは、市民が企業と政府に説明責任を果たさせることだ」と述べている。

営業秘密との関係もあるが、プラットフォームが伝統的な「市場」と同じように高い公益性を持ち始めているなか、透明性を高めていくことは、有効な政策を議論する第一歩となるのではないだろうか。

最後に、プラットフォーム企業に規制を設けるのであれば、「それが自国企業でも同じように規制するか?」を問いかける必要がある。それは公平性のためでもあるし、実際に規制が施行されたときに、実効性の観点から言って最も影響を受けるのは、その司法管轄下に本社を置く自国企業だからである。

 

 

「美団」に見るプラットフォームの新展開

昨日まで中国を訪問し、ITサービス動向に関する調査を行ってきた。特に、上海、杭州、深センを周り、モバイルペイメント、ネットスーパー、デリバリー、無人コンビニ、シェア自転車、配車アプリなど様々な新サービスを実際に体験してきた。

IMG_2079

なんでもQRコードで決済する(写真は駅の券売機)

 

興味深い点は多岐にわたるが、その中で特に印象に残ったのが、デリバリーに強みを持ち、eコマースのプラットフォームを形成する「美団」である。(注:デリバリーを行うのは美団だけではないが、特に印象に残ったため美団を取り上げる。)

日本では巨大プラットフォームとして「BATJ」(バイドゥ、アリババ、テンセント、ジンドンの4社の頭文字を取ったもの)が知られている。その中でも、アリババとテンセントの2社は、それぞれアリペイ、WeChat Payというペイメントを核としたサービスの幅広さと普及度合いにおいて圧倒的であった。

アリババとテンセントのプラットフォームはスマホの中で圧倒的な存在感を放つのに対して、「美団」は、リアルに街中で存在感を放っている。上海でも杭州でも深センでも、至る所に「美団」のジャンパーを着た男性が、電動スクーターで荷物を運んでいる光景を目にする。

IMG_1850 (1)上海市内にて

 

「美団」はもともと口コミサイトから始まったアプリで、飲食店の評判をシェアするサービスだったが、ここからお店のクーポンを売るサイトに発展した。日本で言えば「食べログ」と「Hotpepper」を合わせたようなものだろうか。

さらに、お店の食事をスマホアプリから注文する(あるいはクーポンを買う)と、配送員がお店に取りに行き、自宅など指定の場所まで運んでくれるというサービスへ展開した。だいたい30分から1時間ほどで運んでくれる。自宅から一歩も出なくても買い物、飲食ができるというわけである。

IMG_2082

「美団」のアプリ画面

 

通常、プラットフォームは「Two sided network」を構成することが多い。お店と消費者、楽曲提供者とリスナー、アプリ開発者とアプリ利用者といった具合である。GoogleもAmazonもAppleも、こうしたビジネスモデルで急成長を遂げてきており、それが長期的な競争力の源泉にもなっている。

 

無題2

一般的なTwo-sided network

 

ところが、「美団」は実質的にお店、利用者、そして配送員の3者からなる「3 sided network」を構成しているように見える。配送員に聞いたしたところ、美団に所属しているものの、配送の注文を受け付けるかどうかは自由に判断できるとのことだった。配送員曰く、「自由に仕事をできるところが良い」とのことである。Uberやdidiのドライバーのように、かなり裁量に任されているようで、恐らくは歩合制なのだろう。配送員の裁量度合いにもよるが、プラットフォームにおいて配送員も市場的に取引している様子が伺えた。

 

無題

 

「美団」に見る3 sided network

そして、配送のネットワークをテコにして、美団はeコマースのプラットフォームとして急成長中である。

生活のかなりの部分をスマホでできるようになり、そのスピードと効率性は飛躍的に向上している。しかし、リアルな「モノ」の移動はボトルネックだ。これからは、ネット時代のスピードを発揮するアプリ開発に加えて、いかにボトルネックを解決するかが競争力のあるサービス開発の鍵となるだろう。

配送というボトルネックを押さえた美団の競争力は大きいように見える。日本でいえばアマゾンとヤマトを合わせたようなサービスを、プラットフォーム的に実現していると言えば良いだろうか。

一方、3者にわたるネットワークはどのような意味を持つだろうか。今のところ、美団は大規模なネットワークを構築しており、これから配送ネットワークを整備しなければならない後発にとってはハンデとなる。そういう意味ではネットワーク外部性による競争力は従来型の「2者ネットワーク」より高いかもしれない。

ただし、中国の場合は雇用が流動的で、より良い配送の仕事があれば容易に配送員が移ってしまう可能性もないとは言えない。実際に配送をテコにしたプラットフォームは美団だけでなく、すでに幾つかの事業者が存在する。

また、配送という鍵となる部分を配送員の裁量に任せた場合、十分な配送能力が確保できない可能性もある。注文が入りそうなのに、配送員が誰もいないため注文が成立しない、といった場合である。

一方、日本でこうしたネットワークを構築する際は、はたして十分な数の配送員を確保できるかどうかが課題だ。物流網をプラットフォーム的に実現する美団のビジネスモデルは、圧倒的な数の人材を持つ中国ならではという面もあるかもしれない。今後の展開にも注目したい。

プラットフォームとは何か?

これまで、何度かプラットフォームについて書いているが、「プラットフォーム」という言葉は様々な意味合いで使われているようなので、自分なりに整理してみたい。

自分なりに、というのは、経済や経営の文脈でどのように定義できるかということであるが、幸いなことにプラットフォームについて世の中には研究蓄積が進みつつある。もっとも経済・経営の観点からしっくりくる定義を、先行研究も含めてボストン大学のVan Alstyne准教授がブログで整理しているため、これをもとに書いてみたい。

Van Alstyne准教授は、プラットフォームの要件として以下の2点を挙げている。

  1. 複数の製品群にわたって共通に使用される一連のコンポーネントであり、製品群の機能が第三者(サードパーティ)によって拡張可能なもの
  2. ネットワーク効果を特徴とするもの

要するに、第三者によって機能の追加が可能であり、ネットワーク効果(正のネットワーク外部性)を持つものである。

第三者による機能追加というのは、比較的分かりやすいだろう。AndroidやiPhoneには、第三者が作ったアプリケーションをインストールすることができる。同様に、MicrosoftのWindowsには様々な人が作ったソフトを追加することができる。しかし、Officeというソフトにさらに機能を追加することは、一般的にはできない。

もうひとつのネットワーク効果とは、使う人が多ければ多いほど、ひとりひとりのユーザーにとって便益が増えることだ。電話のユーザーが2人しかいないときよりも、100万人いた方が、繋がる相手が多いため、各ユーザーにとってメリットが大きくなる。

ネットワーク効果の留意点は、コストではなく便益に着目している点である。単にユーザーが多いために割り勘効果でコストが下がる場合、通常はそれをネットワーク効果とは言わない。従って、クラウドコンピューティングにおいて、ユーザーが多ければ設備費用を割り勘できてコストが下がるというのは、ネットワーク効果とは呼ばないだろう。

ではどのようなものがネットワーク効果なのか。Liebowitz教授とMargolis教授は、ネットワーク効果のエッセンスを「他のユーザーとの相互作用が可能になることによって得られる追加の価値」としている。

あるユーザがプラットフォーム上に提供した機能を他のユーザーが使ったり、他のユーザーとプラットフォーム上で取引するなど、ユーザー間で何らかの相互作用がある状況において、取引相手が多いほど各ユーザーにとって利得が多いような場合に、ネットワーク効果があるというのである。

この2つの要件をもとに、以下のようなサービスがプラットフォームの定義にどの程度当てはまるか検討してみよう。

  • Facebook
  • LINE
  • Android
  • iPhone
  • Google Map

FacebookやLINEのネットワーク効果は明らかだろう。ユーザーが多いほど、様々な人と繋がることができる(但し、ユーザの中には知り合いに見つかりたくないという理由で、より小規模なSNSに移行する人もいると聞く。)。一方、第三者による機能追加については追加できる機能を限定した形で公開されている。LINEの場合はスタンプという形であり、Facebookの場合は広告、アプリなどの形態がある。

それに比べて、AndroidやiPhoneはネットワーク効果に加え、誰でもアプリを提供できるため、第三者への公開性はより高いと言えるだろう。

以前取り上げたGoogle Mapも、ユーザーが様々なレイヤー(情報)を付加できるという意味では公開性がある。また、ユーザーが多いほど様々な情報を付加する価値が上がる。従って、この定義に従えばGoogle Mapもプラットフォームと呼ぶことができる。

この2つの要件から浮かび上がってくるプラットフォームの要蹄は、自由度と多様性である。多様性が高いほどユーザー同士の相互作用を行う価値があり、ネットワーク効果を高めることができる。そして、第三者がプラットフォーム上で自由にできるほど、多様なユーザーが参加することになるだろう。

もちろん、サービスとしてのスコープの設定は重要なので、際限なく自由にするわけにはいかない。各サービスがその発展過程において、自由度と多様性をどのように持たせているか、今後も注目していきたい。

プラットフォームと独占、あるいは個別サービスの復活?

先日、プラットフォームについて書いた。プラットフォームにも色々な概念があると思われるが、その時はOSかアプリかという話だった。

この話の続きで、面白いニュースがあったのでこれについてコメントしたい。NYTによると、オンラインホテル予約サービスのExpediaとOrbitzが合併を検討しているそうである(記事:Hotels Fight Back Against Sites Like Expedia and Priceline)。合併が成立すれば、ホテル自らが行う予約サービスを除いたサードパーティのオンライン予約サービスで、全米で75%のシェアを占めるそうである。

これに対して反対しているのは、ホテル業界と消費者団体である。オンライン予約サービスのシェアが高まり、独占的な立場を手にすれば、予約時の手数料が上げられてしまい、ホテル業界や消費者にとって不利益だというのである。

これに関してもう一つ別のストーリーが伝えられている。最近、ヒルトンやマリオットなどでは、ホテルが自ら提供するアプリケーションなどを通じて直接予約した場合、顧客にオンラインチェックイン、無料の食事、Wi-Fi、部屋の選択権など、様々なベネフィットを提供しているそうである。第三者のプラットフォームとは別に、独自で顧客とコミュニケーションを取り、サービスを提供する選択肢である。(直接予約の場合に値下げすることは、オンライン予約業者との契約上、また法律上の制約によりできないそうである。)

この話のポイントは、2つある。一つは、プラットフォーム的な事業者とはいえ、独占的な地位を得ることが消費者の不利益になる可能性がある(と主張されている)点。もう一つは、プラットフォームに乗らない選択肢があるという点である。

プラットフォームにおける独占性の問題

独占的な立場という意味では、オンライン広告におけるGoogle、モバイルアプリケーションにおけるGoogleとApple、企業ソフトにおけるMicrosoftなどが古典的だ。こうした企業が提供するサービスが、例えば独占的な地位を利用して価格を吊り上げることで、消費者に不利益をもたらしているかどうかが比較対象となる。

その一方で、プラットフォームにはネットワーク効果と呼ばれるものがあり、使う人が多ければ多いほど利用者のメリットが増える。いわば独占的な事業者を「育てる」ことが消費者のメリットになっている面もあるのである。また、価格を吊り上げる等の行為があった場合、よほどの参入障壁が無ければ、別の事業者が新たなプラットフォームを提供するかもしれない。いずれにせよ、プラットフォーム的サービスにおいては、独占化は消費者のメリットから生じる自然現象であり、その是非を判断するには、ネットワーク効果のメリットと独占的地位から生じる不利益を比較考量する必要がある。

プラットフォームに乗らない選択肢

一方、ヒルトンやマリオットが直接予約サービスを提供しているように、プラットフォームに乗らずに個別にサービスを提供することも可能である。ただし、そのためにはいくつか条件がありそうだ。

  • ロイヤリティが重要

単発の利用ではなく、繰り返し購入・利用するようなサービスである。上記記事でも触れられていたが、企業側には、顧客の趣味嗜好を分析してサービス向上につながるのであればサービスを向上できるメリットがある。また、ポイントサービスなどを提供して顧客をつなぎとめることができる。

  • ニーズが複雑

単にホテルを予約するというだけでなく、どの部屋にするか、どんな食事がいいかなど、一般的なプラットフォームで対応しきれないような複雑性があれば、個別サービスで提供する価値がある。上記記事でも触れられている航空会社による航空券予約サービスや、カーシェアリングなどはこうした複雑性がある。

いずれにしても、やはりITの影響は、取引コストの低下をもたらし、それがネットワーク効果を通じて独占性につながりやすい。その過程で、プラットフォームに乗るか乗らないか、独占性をどの程度許容するかが論点となるのだろう。

幻の「Google Here」とプラットフォーム戦略

Fortuneによると、Googleが「Google Here」と呼ばれていた開発中のプロジェクトを中止したという。

これは、Google Mapの拡張機能で、提携しているお店に近づくと、スマートフォンにポップアップが表示され、お店のクーポンなどが表示されるものだ。お店に設置するビーコンからの電波を関知して作動する。

中止の理由は、Too invasive、おそらくプライバシーを含めてユーザーの領域に侵入しすぎると考えたこと、またパートナーとなるお店がそれほど多くためだろうと伝えられている。

また、TWiTのTech News Todayによれば、小売店のスマホアプリというのはあまり上手くいっているものが少ないそうだ。わざわざ小売店のアプリをインストールするユーザが少ないようである。Google Hereはアプリのインストールが不要なので、そうした小売店側の課題も解決するためのものだろう。

このストーリーで興味深いのは、プラットフォームがOSではなくGoogle Mapであったところだ。OSをプラットフォームとすれば、新しいアプリをインストールしなければならないが、Google Mapであれば、新たなアプリのインストールは不要な上、膨大な数のユーザーにアプローチできる。

プラットフォームがOSとは限らない。ユーザーベースさえ確立すれば、アプリケーションが新たなプラットフォームになることもあるのである。