個人化するイノベーションに対応した都市戦略が必要だ

国際大学GLOCOMのオピニオンペーパーとして、「個人化するイノベーションに対応した都市戦略が必要だ」を書かせて頂きました。

どうぞご覧ください。

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◆ 遠かった都市とイノベーションの関係

これまで、都市にとってイノベーションは重要な課題でありつつも、どこか遠い存在であった。確かに、「地域イノベーションシステム」や「クリエイティブシティ」などのキーワードの下で、いかに都市や地域におけるイノベーションを促進し、地域活性化につなげていくかという議論が行われてきた。しかし、特に行政の立場から見れば、イノベーションの主な担い手は企業であり、企業の内部で行われている活動はブラックボックスである。公的な視点からは、どのような企業や大学、研究機関を誘致するかという大枠の議論に留まり、直接的にイノベーションを促進する活動には踏み込めなかった面がある。

◆ イノベーションの担い手としての個人の浮上

しかし、この状況は変わりつつある。イノベーションの担い手として、個人が急浮上しているからだ。プラットフォームの普及によって、個人でもスマートフォンのアプリケーションを開発して提供するなど、世界を相手にビジネスを行うことが容易になった。また、シェアリング・エコノミーは、個人が持っている空いた時間、車、スキルなどの資源を互いに融通できるよう仲介している。シェアリングのプラットフォームは、決済のエスクローとユーザによる評価を組み合わせることによって、顔の見えない個人間での取引における信頼の問題を解決してきた。

(続きはこちらでご覧ください。)

スタートアップ×地方創生フォーラム

東京・六本木の国際大学GLOCOMと、新潟県南魚沼市の国際大学で開催された「スタートアップ×地方創生フォーラム~ Forums on the Regional Development by Start-up Clusters~」にモデレータとして登壇しました。(3/16:東京、3/17:南魚沼)

情報技術を活用したスタートアップ企業の創業が盛んになりつつある。その背景として、情報技術の発展により、多彩なビジネスモデルの創出が可能になったことに加え、従来の産業と比較して創業のコストが低減し、少ない資金で事業を始めることが可能となったことが挙げられる。その一方で、情報技術を活用した事業の特性として、場所の制約から比較的自由であるという面がある。そのため、地方で創業したり、地方にサテライトオフィスと構える企業も出てきている。このような中、地域においてスタートアップ企業を育成したり、誘致することにより、その地域の活性化を図る取り組みを行える可能性が出てきている。
地方がスタートアップ企業を誘致し、育成するためにはどのような条件が必要だろうか。また、企業には地方に立地することで、どのようなメリットがあるのだろうか。本フォーラムでは、国際色豊かな学生が集まる国際大学が立地する南魚沼市との連携のもと、東京および南魚沼市でフォーラムを開催し、スタートアップ企業の集積による地方創生の可能性について議論を行う。(開催趣旨)

このフォーラムでは、IT産業を地方に集積させることによって、その地域を発展させるためにはどうすればよいか、を議論しました。

議論の中では、現代のスタートアップビジネスにおいては「ドルフィン戦略」(ゼロサムではなく協力してポジティブサムを目指すこと)や情熱が重要であること、そしてイノベーションのためには社会的なDensity(集積度)が重要であることが指摘されました。そのような中で、南魚沼エリアの様々な魅力(ウィンタースポーツ、食、自然)や、世界中から学生が集まっている国際大学の強みをどのように活かしていけるか、議論を行いました。また、高齢化や人材の希少性、地元企業との連携などの課題についても議論になりました。

IT産業、特にスタートアップの集積においては、様々な論点があります。

  • 自治体と連携した様々なテストベッド
  • 地元企業との連携
  • 人材
  • 都市部(東京)との連携
  • メンター
  • ベンチャーキャピタル等の資金援助

今後、こうした点も含めて現代的なIT産業クラスターについても考えていきたいと思います。

課題解決型オープンデータ活用に向けて

アニス・ウッザマン氏のスタートアップ・バイブルという本を読んだことはあるだろうか。シリコンバレー流のベンチャー企業立ち上げについて手順を追って書かれた入門書であり、極めて簡潔かつ網羅的にかかれているので、興味のある方には是非読んでいただきたい。

ところで、本書に興味深い箇所があった。

ベンチャー企業の立ち上げにおいては、まず、どのような問題を解決しようとしているのかを明確にすることが重要であるとする。その後で、どのようにその問題を解決するのかに移るべきであるとする。この順番が逆では、ベンチャー企業はうまくいかないという。前者がWhatであるとすれば、後者はHowの議論であろう。

もう少し私なりに考えてみると、どのような問題を解決するのか、すなわちWhatを考える過程では、以下のような問いに思いを巡らすことになるだろう。

課題志向の考え方

  • 困っている人は誰か?
  • どのくらい困っているか?
  • それが解決されたら対価を払う人がいるか?
  • それが解決されたらどのようなインパクトがあるか?

言うまでもなく、ビジネスの立ち上げにおいて、より成功確率が高いのはウッザマン氏の言うように、課題からスタートする方法だろう。ただし、問題はオープンデータにおいては、データを見ることが、問題とその解決法を発想する上で役に立つ場合があるという点である。

オープンデータ施策の初期段階では、データが先か、活用法が先かという議論がある。利用者側からは、データが無ければ、どのような活用法があるかわからない。一方、提供側からは、どのような活用法があるかわからなければ、どのようなデータを出せばいいのかわからない、という問題がある。

どちらも一理ある意見であるが、オープンデータの利活用推進のためには、まずは一定のデータを出してみようとする考え方に基づき、取り組みが進みつつある。多くの政府や自治体でデータ公開が広まり、それらを活用したアプリケーションも増えつつある。

しかし、今後、エンドユーザに利便性の大きなサービスの創出に繋げていくためには、課題からスタートすることが必要ではないだろうか。

オープンデータ活用例で有名な農業保険サービスを提供するClimate Corporation(その後Monsantoが買収)は、サービス立ち上げ時に政府機関に情報公開請求を数多く行ったという(出典:Grin, Open Data Now)。

政府機関がデータを公開し、それを民間で利活用するという考え方や制度が一定の広がりを見せている現在、オープンデータが次のステップに進むためには、活用側が課題解決志向になる必要があるのではないだろうか。

そのためには、世の中にどのような課題があるか、それをどのように解決できるか、そしてそれをいかに持続可能にするかが問われてくる。それは、起業家精神(アントレプレナーシップ)にも通じるのではないだろうか。

ユニコーン:1000億円規模のスタートアップ候補たち

「ユニコーン」を聞いたことがあるだろうか?

バンドの方ではない。スタートアップ企業のうち、1000億円以上の企業価値を持つような企業のことを、その希少性から一角獣になぞらえて「ユニコーン」と呼ぶ。

New York Timesにょると、Facebook, LinkedInなどが上場前にすでに企業価値1000億円を超えていた。それらに続くメガ・スタートアップは生まれるだろうか。

New York Timesは、次のユニコーン候補たち50社をリストアップした。なかなか興味深いのでここで紹介したい。詳細な企業名などは記事を直接ご覧いただきたいと思うが、ここでは私なりに独自に集計してみたいと思う。

50社を都市別に集計すると以下のようになる。

都市名      ネクスト・ユニコーン数

  1. カリフォルニア       28
  2. ニューヨーク        8
  3. 北京            3
  4. シカゴ           2
  5. ボストン          2
  6. ベルリン          1
  7. ロンドン          1
  8. ニューデリー、インド    1
  9. 上海            1
  10. グーガオン、インド     1
  11. ケープタウン、南アフリカ     1
  12. バージニア         1

いくつか興味深いことがあるのでコメントしたい。

まず、やはりカリフォルニアが最大勢力である。シリコンバレーだけではなく、カリフォルニア州内にやや分散しているが、スタートアップの集積地としては盤石である

注目は第2位にニューヨークが入っていることだ。少し前から、ニューヨーク、特にブルックリンにITベンチャーが集積しつつあると言われていた。以前はベンチャーといえばシリコンバレーかボストン近郊かであり、それはスタンフォードとハーバード&MITに依るところが大きかった。しかし、ニューヨークという金融と商業の中心地でベンチャーが生まれつつあることは、純粋な技術だけではなく、様々な商取引との組み合わせでビジネスアイデアが生まれてきていることを示唆している。

そして、日本が入っていないことにも触れないわけにはいくまい。関係者からは「だってアメリカでの調査でしょ?日本ことを知らないだけだよ」という声が聞こえてきそうである。しかし、中国、インド、南アフリカまで入ってるのも事実である。日本が入っていないのには二つの理由が考えられる。

  •  純粋に1000億円規模になりそうなスタートアップがいない
  • アピール不足、認知不足

前者だとすると残念な感じもするが、後者だとしても(むしろその方が)課題としては大きい。なぜなら、こういうところで認知され、取り上げられることがサービスのユーザーベースを広げ、投資を引きつけるからである。

次に、サービス分野別に見る。

分野 ネクスト・ユニコーン数

  1. eコマース            13
  2. 健康・医療          6
  3. 金融                     4
  4. ロボット              3
  5. ソフトウェア       2
  6. ビッグデータ       2
  7. マーケティング   2
  8. 業務系                 2
  9. 人材                     2
  10. 予約                     2

そのほかに、ID、クラウド、コミュニケーション、コミュニティ、シェアリング、セキュリティ、デバイス、ファッション、マーケットプレイス、モバイル、教育、人工衛星が各1社づつ入っている。

分野別にみると、非常に幅広いことがわかるだろう。中でも最大のeコマースは、分野に特化したオンライン販売・配送サービスが多い。食料品の配送などが代表的である。多くのサービスは全く目新しいサービスというよりも、今まであったサービスについて、特定の顧客ニーズに特化するようにデザインされているものが多い。逆に言えば、極めて斬新なアイデアでなくても、普通の生活者として思いつくようなものでも良いということだ。

ネクスト・ユニコーンになるには、すごいアイデアを思いつくかどうかではなく、いかに形にして始めるか、そのためのサポートや環境が整っているかが重要なのであろう。