World’s Trend of the Innovation on Blockchain~ブロックチェーン・イノベーションの最新トレンド

※本イベントは満席となりました。

国際大学GLOCOMで、米国シリコンバレーからCaterina Rindiさん、英国ロンドンからCatherine Mulliganさんを招き、下記のイベントが開催されます。私もモデレータを務めさせて頂きます。

World’s Trend of the Innovation on Blockchain~ブロックチェーン・イノベーションの最新トレンド

ブロックチェーン技術を巡っては、世界各地で急速な開発が行われている。中でも、プラットフォーム技術の開発や、様々な領域におけるPoC(プルーフ・オブ・コンセプト)が盛んにおこなわれている。本国際セミナーでは、米国と英国からブロックチェーン関連のイノベーションに精通する識者を招き、世界の最前線で行われているイノベーションを概観し、その国際比較を試みる。特に、どのような分野やテーマにおいてイノベーションが進んでいるか、また技術開発やスタートアップ企業を取り巻くエコシステムの状況、人材の育成や確保などのテーマで、米国、英国、日本の状況を比較しつつ、議論を深める。(開催趣旨より)

本イベントは満席となりましたが、Rindiさん、Mulliganさんをお招きしたセミナーは東京大学でも開催されます。(私もコメンテーターを務めさせて頂きます。)

米英の最新状況を把握できる貴重な機会ですので、どうぞ奮ってご参加ください。

3/27 講義タイトル:Blockchain – Trust for the 21st Century? (ブロックチェーン – 21世紀の信用になるか?)
講師:Dr. Catherine Mulligan

https://sites.google.com/site/iiidls2017/home/page-11

3/29 講義タイトル:The Cutting-Edge Trend of Innovation for Blockchain Technology in the U.S.
講師:Caterina Rindi

https://sites.google.com/site/iiidls2017/home/page-13

 

 

 

 

 

シリコンバレーが生み出す経済学の新潮流

アメリカの経済学界に面白い動きが出てきた。これまで経済学といえばハーバード大学、MIT、シカゴ大学、プリンストン大学など東海岸方面の大学が中心的な役割を果たしてきた。しかしここ数年、西海岸のサンフランシスコ郊外、すなわちシリコンバレーの近くでもあるスタンフォード大学が一流の経済学者を集め、存在感を増しているというのである(New York Times記事:How Stanford took on the Giants of Economics)。

同記事によると、ノーベル賞受賞者であるアーヴィン・ロス氏が最近ハーバードからスタンフォードに移ったほか、若手の優秀な経済学者に与えられるジョン・ベイツ・クラーク・メダルを2000年以降に受賞した11人のうち、4人がスタンフォードにいるそうである。

同紙は、この動きを「経済学研究の幅広い変化の現れ」と見る。それは、「最先端の研究が、偉大な個人の学者によって作られる数学的理論よりも、例えば社会によって収入がどのように異なるか、産業がどのように組織されるかなどの様々なトピックについて、大量のデータを操作して洞察を得る能力に、より大きく依存するようになっている」からであるとする。また、そうした研究のためには他の分野、例えば社会学やコンピュータ・サイエンスとの連携や、最先端の情報技術を使うことが必要になっているという。

短く言えば、一般的理論(グラン・セオリーとでも呼ぼう)の構築よりも、実社会の課題に関する実践的な研究へシフトしており、それもデータの操作が重要になりつつあるということである。実証的研究が盛んになってきたのは今に始まったことではないが、それに加えてビッグデータ操作などの技術的な要素によって、西海岸の大学がより魅力的になっているということだろう。

スタンフォード大学の教育研究の責任者も、大学が優秀な研究者を採用する際に、経済学者がコンピュータ・サイエンスや統計学の専門家とアイデアを交換するなど、部門を越えた取り組みができる環境であることは、大いに有利に働いているという。

一方、スタンフォード大学で情報経済学分野の研究者であったハル・ヴァリアン氏が、Googleのチーフ・エコノミストになるといったこともある。この地域におけるコンピュータ・サイエンス分野の充実は、シリコンバレーの企業とスタンフォード大学の双方にメリットをもたらしているようだ。もっとも、ハーバード大学も近所のMITとは単位互換制度などもあり、文系と理系のシナジーから多くの成果を生み出してきたことはもちろんであるが、世界に影響を与えるサービスが次々に生まれている場所としては、現在のところシリコンバレーに分があるかもしれない。

こうしたイノベーションの場の近くで経済学研究を行うメリットには以下の2つがあるだろう。

経済学的テーマの宝庫である。

日々生まれる新たな技術やサービスは、それ自体が研究対象となりうる。そのサービスにおけるユーザーの行動や経済的な仕組み、また新サービスの社会的なインパクトなども研究対象となりうる。

研究手法の革新

近年だけでも、計量経済学やDSGE(動学的確率的一般均衡)モデルなど、手法の開発が進んできたが、最先端の情報技術を使えば、経済学の手法ももっと進む可能性がある。機械学習、IoT(Internet of Things)などはその候補であろう。

もちろん、こうした実践的な研究から一歩引いて、じっくりと腰を据えて世界を変える理論を産み出すのも大きな意味がある。一方で、スタンフォード大学の例で示されたような、分野横断的な連携や、実践活動との連携から産み出される「学問のイノベーション」も意識しておく必要があるだろう。

シリコンバレーの人脈問題

やや意外に感じたのだが、シリコンバレーではラテンアメリカ出身者のプレゼンスはあまり高くないそうである。New York Timesが、ベネズエラ出身のベンチャーキャピタリストの成功を足がかりに、ようやくラテンアメリカ出身者がシリコンバレーで活躍できる兆しが見えつつことを伝えている(記事:A Venezuelan in Silicon Valley Finds a Niche in Finance)。

Ribbit Capitalのベネズエラ出身の創業者は、2000年代後半、まだ「フィンテック(FinTech)」という言葉が注目されていなかった頃から、金融部門のITベンチャー投資に注力することで徐々に成功を収めたとのこと。それをきっかけに、ラテンアメリカ系の起業家がシリコンバレーで活躍する足がかりとなっているそうである。

同記事によると、長い歴史のある中国やインド系と比べると、ラテンアメリカ系の起業家はまだまだ少ないそうだ。

そこで少し調べたところ、シリコンバレーにおける外国出身者の割合は、以下のようになっている。

  1. メキシコ 21%
  2. 中国 14%
  3. フィリピン 12%
  4. ベトナム 12%
  5. その他アジア 11%
  6. インド10%
  7. その他 北中南米 9%
  8. ヨーロッパ 8%
  9. アフリカ 1%
  10. オセアニア 1%

出典:2014 SILICON VALLEY INDEX

なるほどメキシコはトップであるものの、南米は7位に含まれる程度で少ない。一方、日本はというと、5位のその他アジアに含まれているようだ。

シリコンバレーというと、誰でもオープンで実力さえあれば成功できると思いがちだが、こうした国別の人脈というものが重要なのだというのも、意外な一面である。

シリコンバレーが移民規制に反対

以前、米国共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏の移民規制案について書いたが、これに対してシリコンバレーのIT企業群が反対しているという。(Tech news today:1328)

反対の中心となっているのはForwardusという業界団体で、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグ氏などが中心となっているそうである。

米国のIT企業は移民に依存している部分も多い。先日発表されたGoogleの新体制においても、Googleの新CEOとなったのはインド出身のピチャイ氏だった。

そんな米国のIT企業にとって、移民を制限することは自分たちの国際競争力を阻害する問題でもあるし、何より日頃一緒に外国出身の優秀なスタッフと働いていると、移民を制限することには抵抗を感じるのだろう。

ちなみに、各国の移民流入数は下図の通りである。
immigration

出典:OECD International Migration Outlook 2014より作成。カナダ、アメリカはPermanentとTemporaryの合計。

見ての通り、米国は日本の約30万人に対して270万人と、約9倍の移民流入がある。前にも書いたとおり、移民の受け入れは複雑な問題であるが、米国のIT企業が多様な国の出身者で支えられているのも確かである。

その意味では、米国のIT分野の活気は「アメリカ人」というより、「アメリカ的エコシステム」が象徴するものなのだろう。