個人化するイノベーションに対応した都市戦略が必要だ

国際大学GLOCOMのオピニオンペーパーとして、「個人化するイノベーションに対応した都市戦略が必要だ」を書かせて頂きました。

どうぞご覧ください。

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◆ 遠かった都市とイノベーションの関係

これまで、都市にとってイノベーションは重要な課題でありつつも、どこか遠い存在であった。確かに、「地域イノベーションシステム」や「クリエイティブシティ」などのキーワードの下で、いかに都市や地域におけるイノベーションを促進し、地域活性化につなげていくかという議論が行われてきた。しかし、特に行政の立場から見れば、イノベーションの主な担い手は企業であり、企業の内部で行われている活動はブラックボックスである。公的な視点からは、どのような企業や大学、研究機関を誘致するかという大枠の議論に留まり、直接的にイノベーションを促進する活動には踏み込めなかった面がある。

◆ イノベーションの担い手としての個人の浮上

しかし、この状況は変わりつつある。イノベーションの担い手として、個人が急浮上しているからだ。プラットフォームの普及によって、個人でもスマートフォンのアプリケーションを開発して提供するなど、世界を相手にビジネスを行うことが容易になった。また、シェアリング・エコノミーは、個人が持っている空いた時間、車、スキルなどの資源を互いに融通できるよう仲介している。シェアリングのプラットフォームは、決済のエスクローとユーザによる評価を組み合わせることによって、顔の見えない個人間での取引における信頼の問題を解決してきた。

(続きはこちらでご覧ください。)

仮想通貨を用いた資金調達(ICO)はイノベーションを促すか

金融ジャーナル12月号に執筆させていただきました。よろしければご覧ください。

新連載「テクノロジーの経済学」

Biz/Zineにて、新しい連載「テクノロジーの経済学」を始めました。

テクノロジーと社会・経済の関係を幅広く考えていきます。

第1回:限界費用ゼロ社会で起こる、「経済主体の分散」と「富の集中」とは?

 

前書きより
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近年、テクノロジーの進化のスピードには目を見張るものがある。IoT、人工知能、ブロックチェーンと、新しい技術が次々と生まれてきた。一方で、最近のテクノロジーの進化は、社会的な変革や課題を伴うことにも特徴がある。クラウドソーシングやシェアリング・エコノミーの出現、仮想通貨の実現と普及、自律分散型組織、人工知能と雇用の問題など、社会的な制度、組織、概念などの組み替えが求められるようになっている。

このような現代のテクノロジーの進化を考える上では、テクノロジーと社会の相互作用という視点が不可欠である。テクノロジーは社会制度や人々の考え方に影響を与え、また社会からのニーズがあってはじめてイノベーションが実現する。本連載では、テクノロジーと社会・経済の相互作用という観点を土台としつつ、テクノロジーの進化が我々の社会にどのような変化をもたらしてきたのか、また社会はテクノロジーに影響を受けてどこへ向かっていくのか、考察していきたい。
第1回となる本稿では、イノベーションによって引き起こされる社会変革を考える上で、共通的に使える視点をいくつか提供することにする。

World’s Trend of the Innovation on Blockchain~ブロックチェーン・イノベーションの最新トレンド

※本イベントは満席となりました。

国際大学GLOCOMで、米国シリコンバレーからCaterina Rindiさん、英国ロンドンからCatherine Mulliganさんを招き、下記のイベントが開催されます。私もモデレータを務めさせて頂きます。

World’s Trend of the Innovation on Blockchain~ブロックチェーン・イノベーションの最新トレンド

ブロックチェーン技術を巡っては、世界各地で急速な開発が行われている。中でも、プラットフォーム技術の開発や、様々な領域におけるPoC(プルーフ・オブ・コンセプト)が盛んにおこなわれている。本国際セミナーでは、米国と英国からブロックチェーン関連のイノベーションに精通する識者を招き、世界の最前線で行われているイノベーションを概観し、その国際比較を試みる。特に、どのような分野やテーマにおいてイノベーションが進んでいるか、また技術開発やスタートアップ企業を取り巻くエコシステムの状況、人材の育成や確保などのテーマで、米国、英国、日本の状況を比較しつつ、議論を深める。(開催趣旨より)

本イベントは満席となりましたが、Rindiさん、Mulliganさんをお招きしたセミナーは東京大学でも開催されます。(私もコメンテーターを務めさせて頂きます。)

米英の最新状況を把握できる貴重な機会ですので、どうぞ奮ってご参加ください。

3/27 講義タイトル:Blockchain – Trust for the 21st Century? (ブロックチェーン – 21世紀の信用になるか?)
講師:Dr. Catherine Mulligan

https://sites.google.com/site/iiidls2017/home/page-11

3/29 講義タイトル:The Cutting-Edge Trend of Innovation for Blockchain Technology in the U.S.
講師:Caterina Rindi

https://sites.google.com/site/iiidls2017/home/page-13

 

 

 

 

 

イノベーションをめぐる構造変化

「事業構想」さんに、インタビュー記事を掲載して頂きました。

誰がイノベーションに必要な情報を持つのか 「エッジ」に宿る力

ここで言おうとしているのは、情報の力によって、ヒエラルキーの合理性が失われつつある部分があるということです。

うまくまとめていただいているので、よろしければご覧ください。

 

イノベーターの小規模化を考える② 取引コスト理論から

なぜイノベーター、あるいは広く経済活動の担い手として小規模な事業者や個人が存在感を持ってきたのかを考察する上では、「そもそも、なぜ組織が必要なのか?」からスタートするのが役に立つだろう。

なぜ組織が必要なのか、という問題は、ロナルド・コースやオリバー・ウィリアムソンなどが発展させてきた「取引コスト理論」で議論されてきた。取引コストというのは、大雑把に言えば市場で取引する際の直接原価以外の様々なコストである。もし取引コストが全然ないのであれば、人を雇うより必要な業務は全て委託することで必要な業務を全て行うことができ、組織の出番は無いというわけである。取引コストという概念で、組織と市場のどちらでやるのが有利かを考える分野で、組織の境界、あるいは”Make or Buy Decision”の学問であもる。

そこで、まず取引コストに立脚した検討として、オリバー・ウィリアムソンの代表的な著作である「市場と企業組織」をもとに考えてみたい。

まず、同書における組織の必要性を筆者なりに整理すると、取引の効率性と、意思決定の効率性の二つの問題がある。

取引の効率性の問題

まず、取引の効率性から考えてみるが、市場における取引が上手くいかない、すなわち組織が必要なのは以下の二つのケースがある。

  • ケース1:事前に全ての取引を定義できない
  • ケース2:競争原理が働かない

ケース1は、専門的には限定合理性と不確実性がある場合と言われる。人間の頭脳は完璧ではない上に、将来何が起こるか不確実である状態である。そのような状況では、契約によって外部に委託する内容を完璧に記述することができない。だったら、社員として雇って状況に応じて適切な業務をしてもらった方がよいというわけである。

ケース2は機会主義と少数主体間取引関係がある場合と言われる。外部に委託したくても、一部の者しかその業務を遂行できない場合、その者が機会主義的な行動を取られてしまうと業務が成り立たなくなってしまう。それであれば、その者を雇ってしまって直接指揮監督した方が効率的だ、というわけだ。

上記二つのケースが当てはまるほど、階層的な組織が必要となる。逆の場合には、世の中が分散的・市場的になるのである。つまり、上記二つのケースが減れば、イノベーターが小規模化するということが考えられる。それでは、ITによって上記二つのケースが減った可能性があるだろうか?

ケース1については、実はITといえども限定合理性と不確実性を解消するのは難しいかもしれない。もちろん、Web上で必要なスペック等について詳細に記載することはできるかもしれないが、それを全て読み、理解するのも大変である(限定合理性)。むしろ、ITは不確実性を前提として、業務を細切れにすることで、不確実性の問題を減らしているのではないだろうか。クラウドソーシングなど、以前述べた「リソースの最適配分」がそれである。

例えば、タクシーの場合客がいつどのくらい来るかを完璧に予測することは不可能である。だから、例えばドライバーと一年契約を結び、客を何人乗せること、という条件で契約を結ぶのは難しいかもしれない。従って、一般的にはドライバーを雇用して一定の給料を払いつつ、変動する需要に対応する。しかし、Uberのドライバーが、自分の空いた時間をスポット的に提供するのであれば、まさに現時点での需給がマッチしさえすればよく、長期的な不確実性は問題にならなくなる。一方で、Uberのドライバーがそれ以外に職がなく、実質的に専属ということになれば、不確実性の問題が出てくるかもしれない。

一方のケース2については、電子的な調達やクラウドソーシングなど、少数者取引にならないような仕掛けも増えている。あるいは、ユーザー(購買者)によるレーティングなどの方法で、提供側が機会主義的な行動をとらないようなインセンティブ設計の仕組みも取れるようになってきた。

このように、ITは業務を細切れにすることで不確実性の問題をクリアしつつ、また提供側のインセンティブを上手く設計することで、経済主体の小規模化を促進してきたのかもしれない。

意思決定の効率性の問題

次に、意思決定の効率性について考える。同書が紹介するアローの議論によると、これは限定合理性と関係がある。つまり、個人が全ての情報に通じているわけではないから、各個人の情報を持ち寄って共同決定した方がよい。しかし情報の伝達にはコストがかかるので、ある中心地に集約した方が効率がよい。また同様に意思決定も集約して行った方が効率的であるというのである。さらにウィリアムソンは、情報収集能力と意思決定能力は個人によって違いがあるので、特に得意な者に任せることで効率性が上がる可能性があるとする。ここに、フラットな組織ではなく階層関係を持つ組織の必要性が生まれるというのである。

ここで問題になっているのは、情報の偏在(被対称性)と、情報処理能力である。いずれもITが得意とするものだ。

インターネットの普及で情報の偏在の度合いが下がってくれば、たくさんの人数をかけて情報収集をする必要は減るだろう。「三人よれば文殊の知恵」のご利益も少なくなってくるということだろうか。情報処理能力や意思決定については、人工知能などに期待する向きもあるかもしれないが、現時点ではITによるところというより、教育の普及によるところもあるかもしれない。

これまで見てきたように、組織が必要な理由は、取引の効率性に関する問題と、意思決定の効率性の問題がある。いずれもITによって問題が小さくなっている部分がある。小規模な組織や個人であっても、経済主体、あるいはイノベーターとして活躍できる土壌は、こうしたITの発展によるところがあるのである。

イノベーターの小規模化を考える①

近年のイノベーションを取り巻く環境には、ひとつの大きなトレンドがある。それは、経済的な生産活動、あるいはイノベーションの担い手として、従来からあった垂直統合型の大組織だけでなく、様々な小規模な組織、集団、あるいは個人の存在感も増してきていることである。

特にITの世界では、設立間もないスタートアップ企業が数年で世界を席巻するサービスを提供することはよく見られることである。また、個人の立場でハッカソンやコンテストに参加し、従来であれば大組織で時間を掛けて作られたようなアプリケーションを作る場合もある。あるいは、クラウドソーシングなどでデザインの仕事を請け負ったり、シェアリングのような形で個人が運送、宿泊のようなサービスを提供することもある。

こうした個人や小集団のいわゆる「エンパワーメント」は、おそらくはコンピュータが個人の手に届くようになった1990年代初頭から始まり、現在も続いている現象であろう。その背景にあるのは、言うまでもなくコンピュータの普及によって少ない初期投資でプロダクトを作ることが可能になり、また一方ではネットワーク技術の普及で、プロダクトを世界中に広く、安価に展開することが可能になったことがある。

もちろん、全ての生産活動が小集団に移ったわけでは無い。IT業界ではアップル、グーグル、マイクロソフトなど巨大な企業も生まれてきた。したがって、新たに生まれた企業が巨大に成長する動きと、イノベーションの担い手が小規模化・個人化する動きが同時に進行しているとも言えるのかもしれない。

このような背景から、最近は大企業主催のハッカソンやなど、こうしたトレンドを受けた動きも多く見られるようになってきた。大企業が小規模なイノベーターに固有の技術や、顧客基盤などを求める場合もある。

なぜ、このように小規模な経済主体が台頭してきたのだろうか。このトレンドはどこまで続くのか。なぜある企業は大企業になり、別の企業は小規模事業者であり続けるのか。個人の立場から見ると、なぜある人は大企業で働き、別の人は自ら起業したり自営業として働くのか。これらの動きが積み重なった結果、これからの生産組織や産業構造はどうなるのだろうか。

こうした問いに答えるために、これから数回のブログでは経済学の観点から、経済活動の主体として小集団の存在感が増している背景について考えてみたい。