ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸

経済産業省から、「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸ver1.0」が公開されました。私はこの検討を行った委員会で、委員長を務めさせて頂きました。

「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸ver1.0」を策定しました(経済産業省)

どうぞご活用ください。

ブロックチェーンにおける組織経済的問題

昨日、東京大学で開催されたDr. Catherine Mulliganの講演会で、コメンテーターを務めさせて頂いた。その時の自分の主なコメントを備忘録として記録しておきたい。

分散型社会におけるイノベーションの報酬

もしブロックチェーンが、人が介在しないサービスを可能にするとしても、誰かがイノベーションのリーダーシップを取り、労力をかけてサービスを開発しなければならない。その対価をどのようにして得るか。

仲介者の不在はより激しい競争をもたらすか?

企業が従業員と取引先の仲介者であると仮定し、ブロックチェーンがそうした企業の機能を置き換えると仮定する。しかし、伝統的企業(階層的組織)においては、従業員が権威者(上司)の指示に従うことによって一定の収入を得るという性質を持つ。もしそうした権威を伴う仲介者が不在となれば、個人間のより競争が激しい社会になる可能性は無いか?

信用の仲介者は、付随する様々な責任もとってくれるのではないか?

取引においては情報の正確性や耐改ざん性だけでなく、取引相手の機会主義的な行動や、なりすましなど、様々なリスクが内在する。仲介者として信用を提供している主体は、こうした様々なリスクもカバーし、一定の責任を取ってくれる機能を果たしているのではないか?(Trust provider = Responsibility takerの問題)

上記を含め、私が以前から研究分野としてきた組織経済学の観点から興味深い論点はたくさんある。

ブロックチェーンを使う価値とは何か

先日の社会・経済システム学会の研究会でも話題になったが、ブロックチェーンについては、「結局ブロックチェーンを使うと何がいいんだっけ?」という点について議論になることがある。

ブロックチェーンは多様な特性や使い方、バリエーションがあるため、一概に言えないことが、議論を混乱させる面があるが、一旦現時点での考え方をラフにまとめておいたので示しておきたい。

以前にも書いたが、ブロックチェーンには3つの要素が含まれている。スライド1

この要素を出発点としつつ、現時点でブロックチェーンの活用には3つの方向性があるだろう。第一が一般的なデータベースの代わりとして使うというもの。第二が仮想通貨やトークンの機能を中心に使うもの。そして第三に自律分散的なサービスの仕組みとして使うというものである。

それぞれの使い方の例と、メリット、そしてデメリット・課題を以下の表にまとめた。スライド1

詳細の説明は割愛するが、個別的なメリットと、共通的なメリットがあるだろう。個別的なメリットには、低コストでスピーディな開発が可能、低コストな送金・決済が可能といったものがある。

しかし、より共通的な、また本質的なメリットは、おそらく「情報や通貨の信頼が、組織への信頼に依存しない」ということに尽きるのではないかと思う。従来であれば、「◯◯会社が発行・運用しているものだから安心」、「◯◯協議会が運営しているものだから信頼できる」として、ユーザーが受容していた。

ブロックチェーンを使う場合は、こうした組織への信頼を、アルゴリズムへの信頼で置き換える形となる。したがって、設立間もないベンチャー企業が立ち上げたデジタル通貨でも、一定の信頼を持ってユーザーが受容することができる。

逆に言えば、アルゴリズムの透明性を保ち、信頼を担保できるかは大きな課題だ。

この辺は、ユーザーの受容性という主観に関わる部分なのでまだまだ議論の余地があるところだが、「組織への信頼」に依拠する場合には、そうした組織を立ち上げ、確立するためのコストが膨大にかかる。こうした組織を立ち上げるための社会的なコストが削減されるというのが、最も大きなメリットなのかもしれない。

ブロックチェーンで創造性を鍛えよう

国際大学GLOCOMで発行しているオピニオンペーパーに以下を執筆しました。

「ブロックチェーンで創造性を鍛えよう」GLOCOM OPINION PAPER_No.12_17-003

(案内文より)
「今回のOPINION PAPER No.12では、ブロックチェーン技術の応用について、既存の枠組みに捉われない発想で検討することで、現代のビジネスパーソンに必要な創造性を鍛えることができるのではないかと提案しています。どうぞご一読ください。」