ビットコインとリアル通貨の接合

ビットコインの存在感も再び目立つようになってきたところかと思う。オルトコイン呼ばれる、ビットコインと類似の仮想通貨も数多く登場しており、この分野はFinTechの柱の一つとなっている。

ところが、ビットコインについて正式に規制される動きが加速している。オーストラリアでは、大手銀行がビットコインとの取引を停止する措置を取ったそうである。(2015年10月5日付International New York Times※)

記事を見る限り、大手銀行に開設されていたビットコイン取引所関連の銀行口座が閉鎖されたようである。これによって、ビットコインを持っていても、ビットコインからオーストラリアドルに両替することも、また逆にオーストラリアドルからビットコインに両替することもできなくなる。また、同記事によると、もともと英国や米国では同様に大手銀行はビットコイン関連の取引を停止しているという。

今回の措置で、オーストラリアに17あるビットコイン両替所のうち13が営業停止となったそうである。ビットコインの利用者にとっては大打撃だろう。

オーストラリア銀行協会の担当者のコメントによると、透明性の不足、規制・監視の不足によって、ユーザへのリスクが懸念される他に、決済システムへのリスク、金融システムへの信頼、課税ベースの減少が懸念されるという。もちろんこれはオーストラリアの銀行側の意見であり、ビットコインユーザは別の見解を持つだろう。

興味深いのは、今回の措置は政府が規制したものではないということである。あくまでも銀行がビットコインとの両替に関わる業務を行わないようにしたということである。これまでビットコインについては様子見、黙認という国が多かったと思うが、銀行側がこのような措置を取ったということは、金融業界としてそれなりに脅威を感じているということかもしれない。

また、今回の件でもう一つ興味深いのは、ビットコインといえども、既存通貨との両替というところにそのボトルネックというか、利用価値を確保するための重要なポイントがあったということである。

P2Pの技術がこのリアル通貨との接合部分で行き詰まるのか、はたまた別の方法で打開策を見いだすのか、今後も注目である。

※New York Timesのサイトでは同記事は見つからなかったが、元記事と思われるのはこちら(Reuter)。

“セキュリティ”とプライバシーのトレードオフ

米国の司法省が、アップルに対して捜査対象者のiPhoneのテキストメッセージをリアルタイムに開示する裁判所の命令を得たという。しかしアップルの回答は、iPhoneのiMessageは暗号化されているため、開示できないとするものだった(記事:Apple and Other Tech Companies Tangle With U.S. Over Data Access)。

司法省は、同じようなことをMicrosoftとも裁判で争っているという。Microsoftも同様にメッセージの開示を拒否しているが、その理由はやや異なる。彼らのデータセンターはアイルランドにあるため、司法省はアイルランド政府からの許可を得るべきだというのである。

最近はよりセキュリティを重視したメッセージアプリであるWhatsAppやSnapchatなども登場しているため、捜査機関とこうしたIT企業のユーザの情報を巡る争いは増えるかもしれない。ここで興味深いのは以下の二つの論点だ。

捜査とプライバシーのトレードオフ

捜査が円滑に進むことは、伝統的な意味でのセキュリティが向上することになる。ただ一方、何の罪もない一般ユーザの情報セキュリティやプライバシーが犠牲になる可能性がある。

特に、同記事でも指摘されているのは、捜査機関にサーバー等へのアクセスを認めた場合、そこがセキュリティホールとなり、攻撃対象となってしまう面もあるということだ。伝統的な捜査という意味でのセキュリティは向上するが、ユーザーのデータを含むセキュリティやプライバシーが損なわれる可能性がある。

世界的Webサービスと国家権力の関係

一方、Microsoftのケースに出てきたように、米国の捜査機関が求めたとしても、対象となるデータが米国にあるとは限らない。EUは特に厳しい個人情報保護の基準を設けているし、そもそも米国政府の命令によって他国のサーバーに格納されているデータを開示したり、そこへのアクセスを認めることは司法管轄の面からも課題があるかもしれない。

技術とサービスの進展は、国家とサービス提供者の関係にも変化をもたらしているのである。

教育ITとプライバシー

2015年9月1日版International New York Timesによると、アメリカでは学校でIT機器を使うことは一般的で、幼稚園前から12年生までの学校教育に使われるソフトウェア市場だけで84億ドルになるそうである。多くの学校でGmailやMicrosoft email等を使い、カレンダー機能やWeb検索、ファイル共有などを行うそうだ。

そこで、子供のプライバシーにたいする懸念が高まっている。そこで、学校で使用したITツールやソフトウェアを提供した企業などが、生徒のプライバシー情報を目的外に利用したり、売買したりしないよう、今年だけで全米の46の州で、182もの法律が制定されたそうである。

日本ではIT機器やデジタル教科書の導入が議論されているが、米国はその先の課題に直面しているようだ。学校教育へのIT導入には賛否色々な意見があると思うが、それと同時に、Gmailやカレンダー、Web検索を使っているところをみると、日本とは使い方やねらいも違うのかもしれない。