ブロックチェーン・イノベーション2017

昨年に引き続き、シンポジウム「ブロックチェーン・イノベーション2017」が開催されます。ビットコインの分裂からICO、ブロックチェーンと電力の関係など、幅広いテーマで第一人者が議論します。どうぞ奮ってご参加ください。

申し込み:http://www.glocom.ac.jp/events/3182

開催概要

この数年間の仮想通貨とブロックチェーン技術の発展は、目覚ましいものがある。ビットコインをはじめとする仮想通貨は法整備も進みつつあり、一般の消費者が触れる機会も増えつつあり、またブロックチェーン技術の多方面での応用も、世界各地で取り組みが進んでいる。このような中、国際大学GLOCOMでは、2016年9月にシンポジウム『ブロックチェーン・イノベーション2016』を開催し、ブロックチェーン技術の可能性と課題について俯瞰的に議論を行った。

昨年のシンポジウムから約1年が経過したが、ブロックチェーン技術の応用や発展はさらに加速し、電力取引への応用、仮想通貨を用いた資金調達を行うICO(Initial Coin Offering)など、多様性を増している。その一方で、多くの課題が顕在化しているのも事実である。2017年8月に発生したビットコインの分裂や、企業におけるブロックチェーン活用のメリットやデメリットなど、論点は多岐にわたる。そこで、本シンポジウムでは、仮想通貨の今後の展開や、業務におけるブロックチェーン技術の応用について、掘り下げた議論を行うこととしたい。

日時

2017年12月8日(金)13:30-17:30

会場

コングレスクエア日本橋(2F ホールA・B)

定員

110名

参加費

10,000円(税込)

主催

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
国際大学GLOCOM ブロックチェーン経済研究ラボ

プログラム

13:30-13:35 開会のご挨拶 前川 徹(国際大学GLOCOM所長)

13:35-14:05

講演「ブロックチェーン活用のトレンドとその本質的影響」

高木聡一郎(国際大学GLOCOM 主幹研究員)

14:05-14:55

特別講演「仮想通貨の展開とICOについて」

岩下直行(京都大学教授)

14:55-15:10 休憩

15:10-16:10

パネルディスカッション①「ビットコインの分裂と合意形成の行方」

岩下直行

首藤一幸(東京工業大学准教授)

本間善実(日本デジタルマネー協会代表理事)

【モデレータ】斉藤賢爾(慶應義塾大学SFC研究所上席所員)

16:10-16:15 小休憩

16:15-17:30

パネルディスカッション②「ブロックチェーンの応用可能性と今後の展望」

杉井靖典(カレンシーポート代表取締役CEO)

田中謙司(東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻特任准教授)

宮村和谷(PwCあらた監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 パートナー)

安 昌浩(株式会社ALIS)

【モデレータ】高木聡一郎

仮想通貨を用いた資金調達(ICO)はイノベーションを促すか

金融ジャーナル12月号に執筆させていただきました。よろしければご覧ください。

Financial Inclusion

Singapore Fintech Festivalのテーマの一つが、Financial Inclusion、すなわち貧しいために金融サービスの便益を享受できていない人々に金融を提供するというものであった。

最終日にはこの分野の第一人者で、国連のSpecial Advocateを務めているオランダのマキシマ女王もスピーチを行った。

世界にはおよそ20億人の人々が金融サービスを受けることができていないという。例えば、貧しくて銀行口座を開設できない、農村で働いているため銀行が近くにないといった要因で、金融サービスをほとんど受けることができず、現金のみで生活しているようなケースだ。

これは、どのような問題になるのだろうか。

例えば、働いた報酬を全て現金で受け取る。銀行は隣町にあるので、貯蓄して金利を受け取ることができない。もちろん、口座がないので融資を受けることも難しいし、保険に入ることもできない。

このように、せっかく働いて報酬を得ても、その対価を有効に活用することができず、結果として貧しさから抜け出せないという問題がある。

広い意味では、自分のお金を自分でコントロールできるということは、私有財産制の徹底と言ってもよい。働いて得たお金を、送ったり、貯蓄したり、投資したり、物を買う対価として支払ったりといった活動を自由に行えるということは、人間の自律的な経済活動の根幹でもある。こうした私有財産の徹底は、資本主義と民主主義の基礎でもある。

また、融資を受けたりや投資することはは、自分の将来への投資でもあるし、未来の時間を先取りして有効に活用することでもある。保険はリスクを管理してより効果的・効率的な資源の使い方を可能にする。就学のためのローン、事業資金の借り入れが可能になれば、本人の成長にとっても、経済全体にとってもプラスになる。

Financial Inclusionは、こうした問題をテクノロジーの力で解決しようとする運動である。

ただし、金融へのアクセスが可能になるからといって、全ての人に融資すべきということではないだろう。適切な審査を行うことは貸し手にとっても借り手にとっても必要なはずである。また、デジタルになれば金利等の設定が見えにくくなることもある。この辺は当局による規制や監督が必要になる。

ところで、規制(Regulation)をITを使って円滑に進めることも可能だ。これらはRegTechとも呼ばれる。世の中の業務がデジタルになるにつれ、規制の運用もデジタルに行うことで、より効率的に規制監督を行うことができる。

いずれにせよ、貧しさから抜け出せない原因の一つに、金融の欠落があるとすれば、それをテクノロジーで補う余地がある。適切な規制・監督のもと、個人の自立と尊厳が守られるよう、現場の課題を解決するサービスが企画されることに期待したい。

 

生物学におけるエネルギー通貨と実経済

Singapore FinTech FestivalでMITメディアラボのJoi Itoさんが、Self-adoptive system, System of systemsの話の中で、生物学のエネルギー通貨の話に触れていて、興味深かったので少し考えてみた。

あらゆる生物の中には細胞があり、細胞の中のミトコンドリアでエネルギーを生成している。そこでエネルギーのもとを供給しているのが高分子の一つであるATP(adenosine triphosphate:アデノシン三リン酸)である。このATPが運んでいるエネルギーの元は、摂取した食料である。

ATPはミトコンドリア内でADPと呼ばれる物質に分解され、その際にエネルギーが放出される。ここで放出されたエネルギーは、その後より複雑な分子を作ったり、筋肉を動かしたり、様々な用途に使われることになる。

一方、ミトコンドリア内で使われたADPは、再合成されてATPに戻り、エネルギーを運んで次の活動にも使われることになる。これをATPの「リサイクル」と呼ぶ。

ATPは、生物のあらゆる活動に必要なリソースを運んでおり、また転々流通して使われることから「エネルギー通貨」とも呼ばれている。

ミトコンドリアがATPを取り込み、ある活動をして、外部にまたATPを放出する。こうしてATPは「エネルギー通貨」として天下の回りものとなるわけである。

一方、以下のような疑問も残っている。ミトコンドリア内でATPをもとにエネルギーを放出し、さらにATPをリサイクルした際、使う前と後のATPに含まれるエネルギー要素は減るのだろうか。あるいは、ミトコンドリア内では酸素も使うため、前後のATPは等価なのだろうか。また、何回、あるいはリサイクルされるのだろうか(継続的に食物摂取が必要ということは無限ではないだろう)。各細胞で生成されたエネルギーは、回り回って、食物や酸素など、外部から取り入れたエネルギー源を再生成するために使われるということになるのだろうか。

これらの疑問は置いておくとして、経済の観点から見ると、いくつか興味深い示唆がある。

  • 生物を分子レベルで見ると、ある活動と別の活動が互いに相互依存して動いている。
  • ある分子の活動はその直接的な目的だけでなく、他の活動にも使えるような汎用的な価値移転の仕組みも備えている。
  • 活動の多様性を維持するには汎用的な基準による価値移転が必要かもしれない
  • 一方、実経済においては通貨(生物の場合はATP)の価値が外部要因により乱高下する場合がある(為替レート、金利等)
  • サブシステム間で移転される価値基準が変動することによるメリット・デメリットは何だろうか。

仮想通貨により、地域通貨やIoT通貨など様々な価値移転の方法が生まれているなか、生物システムに教訓を得るのも面白いかもしれない。

参考
ATP: The Perfect Energy Currency for the Cell, Jerry Bergman

 

 

 

 

マニフェスト大賞

今年、マニフェスト大賞の審査員を務めさせていただくことになり、先日授賞式があったので私もプレゼンターとして参加させていただいた。
http://www.local-manifesto.jp/manifestoaward/

この賞は、地方議員をはじめ、より良い政策づくりと課題解決に取り組んでいる方々の取り組みを表彰するというもので、今年は実に2,597件もの応募が寄せられた。

審査員を務めさせていただいて感じたのは、地域における重要な課題、センシティブな問題に対しても真摯に取り組んでいる方々が全国にたくさんいるということだ。政治家というと様々なイメージがあるかもしれないが、現場のニーズを汲み取って、政策として実現していくために地道な努力を重ねている人たちがたくさんいる。そのことを知ることができたことだけでも審査員をさせていただいてよかったと思う。

それにしても、政治家というのは役割が難しい職業だと思う。マックス・ウェーバー的には、その時々の民意を反映するだけで、専門知識は必要ないということになるかもしれない。しかし、特に議員は、行政のチェックと立法という役割に加え、首長あるいは執行部で汲み取りきれないきめ細かな民意の反映や、潜在的な課題の発見と解決策の推進によって、公共的な課題解決力を大いに高めることもできる。

そういう意味では、どうしても最大公約数的な政策を優先せざるを得ない首長や執行部に対して、よりきめ細かな民意を実現するという役割も果たすこともできるだろう。ただし、きめ細かいとは言っても、優先順位や公平性の観点からバランスをとることも必要である。

一方、自治体の首長、国の大臣や首相など、行政府の代表者となれば、より幅広い民意を反映した上で、円滑に行政を運営していく経営者の役割も求められる。

政治家と一口に言っても、その役割は一様ではない。その中で有権者の信託と期待をどのように受け続けることができるか、そこの舵取りはなかなか難しそうである。一人ひとりの政治家が自らの役割をどのように定義するかにもよるのかもしれない。

マニフェスト大賞の話に戻ると、全国の素晴らしい政策と取り組みが一堂に会している。これらをまとめた冊子も出ているので、これらを参考に、さらに素晴らしい取り組みが広がっていくことを期待したい。