プラットフォームとは何か?

これまで、何度かプラットフォームについて書いているが、「プラットフォーム」という言葉は様々な意味合いで使われているようなので、自分なりに整理してみたい。

自分なりに、というのは、経済や経営の文脈でどのように定義できるかということであるが、幸いなことにプラットフォームについて世の中には研究蓄積が進みつつある。もっとも経済・経営の観点からしっくりくる定義を、先行研究も含めてボストン大学のVan Alstyne准教授がブログで整理しているため、これをもとに書いてみたい。

Van Alstyne准教授は、プラットフォームの要件として以下の2点を挙げている。

  1. 複数の製品群にわたって共通に使用される一連のコンポーネントであり、製品群の機能が第三者(サードパーティ)によって拡張可能なもの
  2. ネットワーク効果を特徴とするもの

要するに、第三者によって機能の追加が可能であり、ネットワーク効果(正のネットワーク外部性)を持つものである。

第三者による機能追加というのは、比較的分かりやすいだろう。AndroidやiPhoneには、第三者が作ったアプリケーションをインストールすることができる。同様に、MicrosoftのWindowsには様々な人が作ったソフトを追加することができる。しかし、Officeというソフトにさらに機能を追加することは、一般的にはできない。

もうひとつのネットワーク効果とは、使う人が多ければ多いほど、ひとりひとりのユーザーにとって便益が増えることだ。電話のユーザーが2人しかいないときよりも、100万人いた方が、繋がる相手が多いため、各ユーザーにとってメリットが大きくなる。

ネットワーク効果の留意点は、コストではなく便益に着目している点である。単にユーザーが多いために割り勘効果でコストが下がる場合、通常はそれをネットワーク効果とは言わない。従って、クラウドコンピューティングにおいて、ユーザーが多ければ設備費用を割り勘できてコストが下がるというのは、ネットワーク効果とは呼ばないだろう。

ではどのようなものがネットワーク効果なのか。Liebowitz教授とMargolis教授は、ネットワーク効果のエッセンスを「他のユーザーとの相互作用が可能になることによって得られる追加の価値」としている。

あるユーザがプラットフォーム上に提供した機能を他のユーザーが使ったり、他のユーザーとプラットフォーム上で取引するなど、ユーザー間で何らかの相互作用がある状況において、取引相手が多いほど各ユーザーにとって利得が多いような場合に、ネットワーク効果があるというのである。

この2つの要件をもとに、以下のようなサービスがプラットフォームの定義にどの程度当てはまるか検討してみよう。

  • Facebook
  • LINE
  • Android
  • iPhone
  • Google Map

FacebookやLINEのネットワーク効果は明らかだろう。ユーザーが多いほど、様々な人と繋がることができる(但し、ユーザの中には知り合いに見つかりたくないという理由で、より小規模なSNSに移行する人もいると聞く。)。一方、第三者による機能追加については追加できる機能を限定した形で公開されている。LINEの場合はスタンプという形であり、Facebookの場合は広告、アプリなどの形態がある。

それに比べて、AndroidやiPhoneはネットワーク効果に加え、誰でもアプリを提供できるため、第三者への公開性はより高いと言えるだろう。

以前取り上げたGoogle Mapも、ユーザーが様々なレイヤー(情報)を付加できるという意味では公開性がある。また、ユーザーが多いほど様々な情報を付加する価値が上がる。従って、この定義に従えばGoogle Mapもプラットフォームと呼ぶことができる。

この2つの要件から浮かび上がってくるプラットフォームの要蹄は、自由度と多様性である。多様性が高いほどユーザー同士の相互作用を行う価値があり、ネットワーク効果を高めることができる。そして、第三者がプラットフォーム上で自由にできるほど、多様なユーザーが参加することになるだろう。

もちろん、サービスとしてのスコープの設定は重要なので、際限なく自由にするわけにはいかない。各サービスがその発展過程において、自由度と多様性をどのように持たせているか、今後も注目していきたい。

絵文字(emoji)のグローバル化とWeb広告

Millenials(ミレニアル、日本語だとミレニアム世代とも言う)とは、一般的には2000年ごろに就学した世代を言うようだ(Wikipedia参照)。現在ではもう少し若い世代までを示す用語として使われており、Wikipediaによると、1980年代初頭から2000年代初頭生まれを指すようなので、かなり幅広い。

ミレニアム世代は、デジタルネイティブ世代でもあり、幼い頃からデジタル機器に囲まれて育った。さらに、米国では伝統的な価値感と異なる行動様式を持つ世代とも見なされている。すなわち、親と同居し、車を買わず、他人と様々なものをシェアする世代だ。

ミレニアム世代について詳しく知りたい人は、Intelligence Squaredのディベート番組があるので、そちらも聞いてみてほしい。英語ですが、書き起こしたスクリプトもあって英語の勉強に最適ですよ。

前置きが長くなったが、New York Timesは、こうした若い世代のネット利用について興味深い記事を掲載している。(記事:Brands Woo Millennials With a Wink, an Emoji or Whatever It Takes

ミレニアム世代を含む18歳から34歳の世代はマーケティング上重要な世代だが、この世代はどんどん従来のメディア、テレビや印刷された新聞から離れ、モバイル機器と過ごす時間が増えている。さらに、彼らは広告が表示されないアプリを多用しており、ネット広告の有効性も下がってきているという。

そこでマーケティング上浮上しているのが、なんと絵文字である。最近はLINEやFacebook Messengerなど、様々なメッセージングアプリで絵文字が使えるようになっているが、そこに企業の絵文字を組み入れれば、若い世代にもリーチできるのではないかということである。GE、Domino’s Pizzaなどが、すでに絵文字を使って企業と消費者がコミュニケーションを取る試みを行っているという。

この絵文字は、英語で”emoji“と呼ばれているので、日本発祥の言葉であろう。Webサービスにおいて日本発のものが世界に普及することはあまり多いとは言えないため、これはこれで興味深いことである。(参考:Wikipediaにおけるemojiの解説

その一方で、以下のような素朴な疑問が浮かんだ。

なぜそこまでして広告を出すのか?

世の中には、広告のないサービスはたくさんある。カフェで買うコーヒーのカップに広告は載っていないし、散髪するのに広告を見せられることもない。映画の画面の端に広告が表示されることもない。(映画の前に新作映画の広告はあるが。)

Webに広告を出すことにこだわる一つの理由は、それが伝統的に広告の媒体であったテレビや新聞を代替していると考えられているからだろう。テレビの視聴が減るなら、代わりにネットに広告を出そう、というわけである。しかし、LINEやFacebookはテレビの代替とは言えない面もある。そう考えると、単純にマスメディアの代替とは言えない。

もうひとつの理由は、広告収入が多くのWebサービスを支えているということである。以前、広告ブロッカーにについて書いた際にも取り上げたが、Two-sided market、あるいはTwo-sided networkという考え方がある。片方のネットワークがもう片方のネットワークを支えているものだ。Webサービスの場合、広告主のネットワークが、一般消費者を支えている。

したがって、Webサービスにおいて広告が重要なのは、広告主にとってというよりも、むしろサービス提供側にとっての問題であるのかもしれない。その意味では、広告を敬遠する消費者にとって新たな広告的スキーム、すなわちこの場合emojiを導入するのは、広告主というよりもサービス提供者のインセンティブによるものであり、広く言えば消費者側なのかもしれない。

やはり、広告に変わるマーケットメカニズムを見出すまでは、Webサービスは広告から離れるのは簡単にはいかないのかもしれない。

NBER(全米経済研究所)訪問

2007-08年に住んでいたので、それ以来約7年ぶりにボストンを訪問した。今回はプライベートでの旅行だったが、お誘いいただいて、NBER(全米経済研究所)のセミナーに参加することができた。

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NBERのセミナーは少人数のもので、ある研究者が執筆中の論文についてプレゼンテーションを行い、それについてディスカッションするというものである。聞き手には、全米を代表する高名な経済学者から、現地の博士課程の学生まで様々だが、少人数であることもあり、アットホームな雰囲気の中で活発な議論が行われた。なお、こうしたセミナーではサンドイッチやピザ、コーヒー、クッキーなどが振舞われることが多い。今回もサンドイッチ、クッキーと飲み物をご馳走になりながらのセミナーとなった。

内容は割愛するが、発表とディスカッションを見て感じたのは、研究の意義や、素朴な疑問について、特に突っ込んだ議論があるということである。一流の経済学者であっても、コメントの多くはテクニカルというよりも、研究の意義や結果の解釈に関するものが多かった。自分の生活や住んでいる街に置き換えて、内容が腑に落ちるかどうかが討論の中心となった。

NBERは研究と合わせて政策的な提言を行えるような論文(ワーキングペーパー)を豊富に提供している。その意味では、その研究が提示する政策的なインプリケーションがどこまで現実性があるか、納得性があるかを重視しているからかもしれない。

重鎮の学者から若手研究者、博士課程の学生までが気楽に集まり、討論を行える場は研究のブラッシュアップの意味でも大きい。また、こうしたコミュニティから大規模な共同研究なども生まれてくるのだろう。先日シリコンバレーと経済学について書いたが、ボストン地域のアカデミックなダイナミズムもまだまだ健在である。

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ボストンといえばチャールズ川

シリコンバレーが生み出す経済学の新潮流

アメリカの経済学界に面白い動きが出てきた。これまで経済学といえばハーバード大学、MIT、シカゴ大学、プリンストン大学など東海岸方面の大学が中心的な役割を果たしてきた。しかしここ数年、西海岸のサンフランシスコ郊外、すなわちシリコンバレーの近くでもあるスタンフォード大学が一流の経済学者を集め、存在感を増しているというのである(New York Times記事:How Stanford took on the Giants of Economics)。

同記事によると、ノーベル賞受賞者であるアーヴィン・ロス氏が最近ハーバードからスタンフォードに移ったほか、若手の優秀な経済学者に与えられるジョン・ベイツ・クラーク・メダルを2000年以降に受賞した11人のうち、4人がスタンフォードにいるそうである。

同紙は、この動きを「経済学研究の幅広い変化の現れ」と見る。それは、「最先端の研究が、偉大な個人の学者によって作られる数学的理論よりも、例えば社会によって収入がどのように異なるか、産業がどのように組織されるかなどの様々なトピックについて、大量のデータを操作して洞察を得る能力に、より大きく依存するようになっている」からであるとする。また、そうした研究のためには他の分野、例えば社会学やコンピュータ・サイエンスとの連携や、最先端の情報技術を使うことが必要になっているという。

短く言えば、一般的理論(グラン・セオリーとでも呼ぼう)の構築よりも、実社会の課題に関する実践的な研究へシフトしており、それもデータの操作が重要になりつつあるということである。実証的研究が盛んになってきたのは今に始まったことではないが、それに加えてビッグデータ操作などの技術的な要素によって、西海岸の大学がより魅力的になっているということだろう。

スタンフォード大学の教育研究の責任者も、大学が優秀な研究者を採用する際に、経済学者がコンピュータ・サイエンスや統計学の専門家とアイデアを交換するなど、部門を越えた取り組みができる環境であることは、大いに有利に働いているという。

一方、スタンフォード大学で情報経済学分野の研究者であったハル・ヴァリアン氏が、Googleのチーフ・エコノミストになるといったこともある。この地域におけるコンピュータ・サイエンス分野の充実は、シリコンバレーの企業とスタンフォード大学の双方にメリットをもたらしているようだ。もっとも、ハーバード大学も近所のMITとは単位互換制度などもあり、文系と理系のシナジーから多くの成果を生み出してきたことはもちろんであるが、世界に影響を与えるサービスが次々に生まれている場所としては、現在のところシリコンバレーに分があるかもしれない。

こうしたイノベーションの場の近くで経済学研究を行うメリットには以下の2つがあるだろう。

経済学的テーマの宝庫である。

日々生まれる新たな技術やサービスは、それ自体が研究対象となりうる。そのサービスにおけるユーザーの行動や経済的な仕組み、また新サービスの社会的なインパクトなども研究対象となりうる。

研究手法の革新

近年だけでも、計量経済学やDSGE(動学的確率的一般均衡)モデルなど、手法の開発が進んできたが、最先端の情報技術を使えば、経済学の手法ももっと進む可能性がある。機械学習、IoT(Internet of Things)などはその候補であろう。

もちろん、こうした実践的な研究から一歩引いて、じっくりと腰を据えて世界を変える理論を産み出すのも大きな意味がある。一方で、スタンフォード大学の例で示されたような、分野横断的な連携や、実践活動との連携から産み出される「学問のイノベーション」も意識しておく必要があるだろう。

シェアリングと雇用関係

先日、Uberはシェアリングかという記事を書いたが、今度はカリフォルニアの当局が、Uberの元ドライバーがUberの従業員であったと認定したとのこと(New York Times記事:California Agency Says Former Uber Driver Was an Employee)。

ケースバイケースで様々な判断があるようだが、カリフォルニアでの判断基準としては、サービスを提供する作法や方法について、Uberのコントロール下にあるかどうかを重視しているようである。一方のUber側は、ドライバーは被雇用者ではなく、Contractor(契約に基づくドライバー)と考えているようだ。

シェアリングにも色々なものがあるが、雇用関係が問題になっているのは、Uberがシェアの対象としてるものが役務であるからだろう。これがベビーカーや車などのモノであれば、雇用関係云々は問題にならないはずである。Airbnbなどの宿泊については、単に不動産自体のシェアであれば問題にならないかもしれないが、部屋の提供の仕方や掃除の作法など、提供の方法まで統一化されてくれば、同じように雇用関係であるかどうかが課題となるかもしれない。

一方で、似たような関係としては委託がある。UberのドライバーやAirbnbのホストがプラットフォーム事業者と委託関係であれば、事業者が業務のやり方を細かく指定することもできるだろう。しかし、その場合はさまざまな責任が委託元に課せられるのかもしれない。

いずれにせよ、シェアリングと雇用関係を考える上で、これまでの法制度は馴染まない部分があるかもしれない。一方で、労働者の保護の観点からは、これまでの法制度に則って判断すべきなのかもしれない。難しい問題である。

シリコンバレーの人脈問題

やや意外に感じたのだが、シリコンバレーではラテンアメリカ出身者のプレゼンスはあまり高くないそうである。New York Timesが、ベネズエラ出身のベンチャーキャピタリストの成功を足がかりに、ようやくラテンアメリカ出身者がシリコンバレーで活躍できる兆しが見えつつことを伝えている(記事:A Venezuelan in Silicon Valley Finds a Niche in Finance)。

Ribbit Capitalのベネズエラ出身の創業者は、2000年代後半、まだ「フィンテック(FinTech)」という言葉が注目されていなかった頃から、金融部門のITベンチャー投資に注力することで徐々に成功を収めたとのこと。それをきっかけに、ラテンアメリカ系の起業家がシリコンバレーで活躍する足がかりとなっているそうである。

同記事によると、長い歴史のある中国やインド系と比べると、ラテンアメリカ系の起業家はまだまだ少ないそうだ。

そこで少し調べたところ、シリコンバレーにおける外国出身者の割合は、以下のようになっている。

  1. メキシコ 21%
  2. 中国 14%
  3. フィリピン 12%
  4. ベトナム 12%
  5. その他アジア 11%
  6. インド10%
  7. その他 北中南米 9%
  8. ヨーロッパ 8%
  9. アフリカ 1%
  10. オセアニア 1%

出典:2014 SILICON VALLEY INDEX

なるほどメキシコはトップであるものの、南米は7位に含まれる程度で少ない。一方、日本はというと、5位のその他アジアに含まれているようだ。

シリコンバレーというと、誰でもオープンで実力さえあれば成功できると思いがちだが、こうした国別の人脈というものが重要なのだというのも、意外な一面である。

社会情報学会「学位論文賞(博士論文)」及び「新進研究賞」を受賞

社会情報学会より、「学位論文賞(博士論文)」並びに「新進研究賞」を頂きました。

特に新進研究賞は、「対象者は、同一年度の優秀論文賞、論文奨励賞、大学院学位論文賞(博士論文賞、修士論文賞)の受賞者とし、それらの中で最高の評価を得た受賞者につき表彰する。」とのことで、大変名誉ある賞を頂き大変感謝しております。

これを励みに、今後も研鑽を積む所存です。今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。